名義変更手続き

遺産分割協議で被相続人の財産をどのように分けるかが決まったら、協議書を作成し。財産の払戻しや名義変更の手続きを行います。

相続財産の種類によっては、名義変更に期限が決められている者がありますので注意が必要です。

本記事では、預貯金や証券口座、不動産等の名義変更について説明します。

預貯金口座・株式等の名義変更手続き

金融機関口座の名義変更は、いつまでにしなければならないという期限は特にありませんが、できるだけ早めに手続きすることが望ましいです。
理由として、一部の相続人が預貯金を引き出して使い込むなどの、トラブルが生じる可能性があるからです。また、名義変更をする前に相続人自身が亡くなってしまった場合には、その子ら相続人が財産を引き継ぐことになり手続きが煩雑になります

預貯金口座の名義変更や解約手続き

銀行などの金融機関は、口座名義人が亡くなったこと知ると、口座を凍結して入出金ができないようにします。
口座振替による支払いがある場合は、支払先へ連絡を入れて、別の支払い方法に変更する必要があります。

預金の解約や名義変更の手続き方法については、各金融機関で決められた手続きを行います。相続人に財産を移転させる方法は以下の3通りあります。
 ①口座の名義を相続人に変更する
 ②口座の残金を相続人の口座に振り込む
 ③口座の残金を現金で払い出す

手続きの際に必要となる書類については、各金融機関に確認する必要がありますが主に以下のものを求められます。
 ①口座名義人の死亡が確認できる住民票除票
 ②遺言書(作成していた場合)
 ③遺産分割協議書
 ④相続人を確定するための戸籍・除籍・原戸籍謄抄本

預金残高が少額だった場合、金融機関によっては通常の相続手続きより簡易的に済ませることができる場合があります。例えば、ゆうちょ銀行では、口座残高が100万円以下の場合は、相続人を代表した1人の名前で手続きを完了することができます。

必要書類のうち被相続人・相続人の戸籍謄本等については、法務局による認証文が付いた法定相続情報一覧図を提出することで、戸籍謄本等の提出を省略できる場合があります。法務局に法定相続情報一覧図と戸籍謄本等を提出して保管・交付の申し出をすると、無料で複数枚の法定相続情報一覧図の交付を受けることができるので、同時に複数個所の相続手続きを進めることができて効率的です。

株式等有価証券の名義変更

最近はネット証券も気軽に利用できるようなり、投資への関心の高まりから株式や投資信託等の有価証券を保有されている人も多いと思います。

名義変更手続きについては、おおむね銀行などの金融機関と同様の流れになりますが、株式の換金については、一旦、相続人の口座に移すことが一般的です。よって、相続人がその証券会社に口座を持っていない場合は、新たに口座を開設する必要があります。

相続した株券が2009年以前に発行された上場株式の場合は注意が必要です。
上場企業の株券は、2009年にすべて電子化されており、それ以降は紙での株券は発行されていません。万が一、2009年以前の電子化されていない紙の株券を相続した場合は、株券が無効となっている可能性がありますので、その場合はまず株券を有効にする手続きが必要になります。

詳しい手続きについては、口座のある証券会社へ確認します。もし取引の証券会社がわからない場合は、株券を発行している会社へ直接確認します。

非上場株式の場合は、株券の発行会社へ相続が発生したことを伝えて、案内に従って相続手続きを行います。

不動産の名義変更手続き

不動産の名義変更については、2024年(令和6年)4月より「不動産を相続したことを知った日から3年以内の相続登記の申請」が義務化されます。
3年以内の相続登記を怠った場合は10万円以下の過料(ペナルティ)が科されることになりますので、相続の発生を知ったら早めに手続きをする必要があります。

不動産の相続登記時の必要書類として、「遺言書がある」または「法定相続人は一人のみ」の場合を除いて、遺産分割協議書が必ず必要になります。

相続登記の申請は、不動産を管轄している法務局に所有権移転の登記申請書を提出します。必要書類は以下の通りになります。相続人ご自身で手続きをすることが難しい場合は、司法書士に依頼します。

【遺産分割協議書によって相続登記を行う場合】
・登記申請書
・被相続人の出生から死亡までの除籍謄本・原戸籍謄本(法定相続情報一覧図があれば不要)
・法定相続人全員の戸籍謄本(法定相続情報一覧図があれば不要)
・当該不動産の相続人の住民票の写し
・遺産分割協議書と法定相続人全員の印鑑証明書
・固定資産評価証明書
・登録免許税(印紙で納付)

詳しい手続きについては、法務局のホームページでご確認ください。

その他相続財産の名義変更手続き

その他の主な財産の相続手続きについては、次の通りです。

自動車の名義変更

自動車の相続は、廃車するにしても、売却するにしても、一旦は相続人の名義に変更する必要があります。被相続人名義のままで、廃車や売却、譲渡を行うことはできません。
万が一、自動車にローンが残っている場合は、残債を相続人が一括返済する必要があります。

自動車の名義変更は、新たに所有する人(相続人)の住所地を管轄する陸運局に移転登録申請を行います。軽自動車の場合は軽自動車検査協会で行います。必要書類は以下の通りになります。

【自動車の移転登録申請 必要書類】
・移転登録申請書(陸運局の窓口か、国土交通省のウェブサイトからダウンロード)
・自動車検査証(車検証)
・車庫証明(警察署で発行してもらう)
・遺産分割協議書(自動車の相続について明記されているもの)
・自動車を相続される方の住民票
・相続人全員の印鑑証明書
・被相続人と相続人全員が記載されている戸籍謄本(法定相続情報一覧図があれば不要)
・手数料納付書(500円の自動車検査登録印紙)
・自動車税申告書

ゴルフ会員権の名義変更

ゴルフ会員権の相続の可・不可は、そのゴルフクラブの会員規約によって決められていますので、規約を確認する必要があります。
預託金を採用しているゴルフクラブの会員権を場合、預託金の返還請求権※がありますので、相続手続きの方法に加えて、預託金の返金についても確認する必要があります。
※注意:預託金の返還請求権はゴルフ会員を退会することが前提です。退会時に未納会費等があれば、支払いを求められることがあります。

ゴルフ会員権は相続税評価の対象になりますので、相続した方がゴルフをしない方でもそのまま放置せずに、その会員権の資産価値をしっかりと確認し、相続税評価額を算出しましょう。

名義変更の方法については、ゴルフクラブの案内に従って手続きを行います。多くのゴルフクラブでは、以下の書類の提出を求めることが多いようです。

【ゴルフ会員権の名義変更 必要書類】
・被相続人と相続人全員の戸籍謄本
・遺産分割協議書(ゴルフ会員権の相続について明記されているもの)
・相続人全員の印鑑証明書
・名義書換料(金額はゴルフ場による)

最終的にゴルフ会員権を売却した場合、譲渡益には譲渡所得税が課税されますので、確定申告を行って納税する必要があります。

ゴルフクラブの会員でいる間は、その会費がかかり続けます。相続が決まったら、継続するか退会するかをよく検討する必要があります。

名義変更等の手続きに困ったら

相続財産の名義変更手続きには期限がない、または期限までに猶予があるものも多いですが、時間はまだあると手続きに時間をかけている間に、次の相続が発生してしまうなどの問題が生じたら、また一から相続の手続きを始めなければいけない状況になります。
遺産分割協議がまとまったら、名義変更等の手続きは速やかに行いましょう。

いずみ相続相談室では、名義変更等の手続きのサポートしております。「手続きをする時間がない」や「面倒でよくわからない」などのお困り事がありましたら、いずみ相続相談室までお気軽にご相談ください。